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翌日。


あたしと大雅が一緒に登校してくると、サッカー部が試合で負けたと言う噂はすでに学校中に広まっていた。


みんなが大雅を見て憐れんでいるように見えて、イライラして来る。


大雅の頑張りを知りもしないで憐れむなんて失礼だ。


「心、ちょっと話がある」


教室に入る前にそう言われて、あたしは立ち止まった。


「え?」


「ちょっと、こっちに来て」


手を引かれ、ひとけのない階段へと移動して来る。


「話ってなに?」


大雅がこんな所にあたしを連れて来るなんて珍しい。


「俺、サッカーやめようと思うんだ」


その言葉にあたしの頭の中は一瞬にして真っ白になっていた。


今、なんて言ったの?


そう聞き返したいけれど、言葉にならない。


視線だけせわしく動き回して大雅を見る。


「驚かせてごめん。でも、昨日夜決めたことなんだ」


昨日の夜?


なにそれ、昨日試合が終わった時はそんな事言ってなかったじゃん。


次の試合に意気込んでたじゃん。


そんな気持ちがグルグルと回るだけで、なんにもならない。


「話ってそれだけだから」


そう言い大雅はあたしに背を向けて歩き出していた。


「た……いが……」


名前を呼んだけれど、その声は小さすぎて大雅まで届くことはなかったのだった。