「誰ですか?」


「なにあんた、あたしたちのことまだ覚えてなかったわけ?」


ハートのネックレスを付けた方の先輩があたしを睨みつけてそう言って来た。


まだ覚えてないってこと、何度もここへ来ていたってことみたいだ。


そんなことを言われても、あたしは正しい記憶しか持っていないからわからないけれど。


「丸っきり覚えてないです」


そう言うと、もう1人のショートカットの先輩が楽しげに笑い声を上げた。


「同じクラスのサナとリカ。覚えてあげてね?」


楓先輩が小首を傾げてそう言った。


2人は楓先輩の取り巻きみたいだ。


さっきから楓先輩にぴったりくっついて、見ているだけで暑苦しくなってくる。


「そうだ先輩方。1枚写真なんてどうですか?」


あたしはそう言い、自分のスマホを取り出した。


「はぁ? 何言ってんのあんた」


サナと呼ばれたネックレスの女が威嚇して来る。


「記念ですよ、記念。サッカー部の練習風景と一緒に撮ってあげますよ」


あたしはそう言い、先輩たちの後ろへと回った。


この位置ならサッカー部と先輩3人組を同時に撮ることができる。


先輩たちは不審そうな表情を浮かべながらも、こちらを向いてポーズをとった。


その光景に内心ニヤリと笑ってしまう。


「いきますよー?」


レンズの奥には大雅の姿が見える。


あたしはそのタイミングでシャッターを切ったのだった。