私が知っている限りの北斗くんは何事も冷静ってイメージ。一年間も追いかけ回されても怒らないのに、よっぽど頭にきたのかな。


「しかも何でデートなんて言ったのか分からない。俺、多分浮かれてます。またなつみさんに迷惑かけちゃう」


心なしか落ち込んでいるようなトーン。

「それはいいんだけど。玉木さんはその後どうなったの?」

「何か怒ってたような気がするけど。タイムロスしたから俺、全速力で走って大学出て。取りあえず上手く巻いたと思う。着いてきてないし」


プッと吹き出してしまった。笑っている私を北斗くんはキョトンとした顔で見ている。


「笑ってごめんね。絶対怒ってる玉木さんとそれに無反応っていうか、表情一つ変えずに走って出てきた北斗くんが浮かんじゃって」

「確かに表情は変わってないと思います」


また笑いそうになるのを堪えて。怒ってる北斗くんも見てみたいな、なんて思った。


「行こうか。寒いし、お腹空いたし」

「どこ行くんですか?俺、ほんとに楽しみで」

「それはお楽しみだよ」


素直に言ってくれるところが可愛い。表情が柔らかくなってるし、北斗くんて結構コロコロ表情が変わる。


「なつみさん、明日仕事?」

「うん。だからあんまり飲まないようにする」

「酔っ払ったらちゃんと送って行くんで」


年下の男の子に介抱してもらうなんて情けない事は出来ない。面倒臭がらずにやってくれそうな姿が浮かんでしまうから尚更。