「可哀想にねぇ。春休み入って早々にインフルエンザだなんて」

「まったくだよ」


なつみさんの職場にボランティアに行った二日後、俺は高熱でダウンした。日曜日だったから親父が休日診療の病院に連れて行ってくれて、検査をしたらインフルエンザ。でも熱はその日を含めて二日で下がって、完治の診断が出るまではバイトも休み。まだ関節痛はあるけれどその他は至って元気。


「バレンタインの前で良かったわね」

「どうして」

「どうしてって、せっかく彼女がいるのにバレンタインに寝込んでたら貰えないじゃない。あ、最近は逆チョコもあるけど。どの道その日にインフルじゃ何も出来ないわね」


カレンダーを見て、バレンタインが迫っている事に気がついた。バレンタインかぁ。去年は春休みに入る前に玉木に早めのバレンタインだと言われて貰ったっけ。貰ったっていうより押し付けられたんだけど。お返しはちゃんとした。蒼のアドバイスでマカロンと紅茶の詰め合わせ。


「逆チョコって、男が普通にチョコあげるの?」

「まぁチョコに限らずとも、ちょっとしたプレゼントでもいいんじゃない?…北斗、本当に彼女いるのよね?」

「えっ、疑ってんの。この前渡したじゃん、お正月の手土産のお返し」


ボランティアの後になつみさんと食事に行って。海鮮が美味しいっていう居酒屋さんで。その時にお返しを持って行ってと渡された。


「そうだけど…あんた、全然そういう素振りがないのよねぇ。お兄ちゃんと違って浮かれたりしないし」


兄貴は俺と真逆だから感情が素直に出る。彼女とデートの日なんて浮かれてルンルンだったし、失恋すれば明らかに落ち込んでたり。


「ちゃんとお礼伝えてくれたでしょうね」

「すぐ伝えたよ。その日のうちに」