俺は昔からバカみたいにうるさいから(バカなんだけど)、北斗が気になって仕方なかった。毎日毎日懲りずに話しかけて、勝手に北斗と呼び捨てにする俺に最初はものすごく引いて嫌そうな顔をしていたけれど、二ヶ月くらい経ったある日の帰りだった。


「なー、北斗ってどこに住んでんの。部活やってないって事はバイト?たまには一緒に遊びに行かね?優斗もいいヤツだよ。ていうかお前、そんなにムスッとしてスカしてんのにモテるっていうのがムカつくよな」


一人でベラベラ喋り続ける俺に北斗が笑った。初めて見る北斗の笑顔はこれ以上ないくらい、くしゃくしゃで、いつものポーカーフェイスとは違って幼さの残る普通の高校生だった。


「やっぱ普通に笑えんじゃん。お前、何だかんだ表情変わってるからね。無の時が多いけどムスッとしてたり、ちょっと笑ってたり、女子はクールでカッコイイとか騒いでるけど、それだけじゃないって俺気づいてるから」

「何それ。能瀬、俺のストーカーか!」

「お前のストーカーなんてやっても何の得もねーよ」


俺達は大声で笑いながら学校を出て一緒に帰った。それからは優斗と三人で遊びに行ったり、学校でも毎日一緒にメシを食って、時々北斗に勉強を見てもらったり。

北斗は感情を出す事が苦手だけど、一度仲良くなればそんなのは関係ない。笑うし怒るしバカ騒ぎする時だってある。


「俺、蒼と知り合ってなかったら多分友達なんていなかったよ。今までずっとそうだったし。一人でも困らない、むしろ一人が好きだし楽だと思うけど、でも友達がいるっていいなって思えた。一緒に遊んだり騒いだり大事な経験だよね。これからもよろしく」


揃って大学進学が決まった時に北斗が言った。いつも俺の事はうるさいとか騒がしいとか言うのに(今でもそう)。
あの日、北斗に会っていなかったら俺は今頃どうしていたんだろう。多分、大学には行けてなかっただろうな。