「千尋はどうなの?ヒロミチくんと何かあった?」
そして、話は私の方へ回ってくる。堅実という点では私こそ堅実を絵に描いたような人生だ。
「うん。プロポーズされた。」
「まぁ、そろそろよね。仕事は?」
「続けるよ。もちろん。」
「で、なんでそんな顔してんの?」
「マリッジブルー?」
「あー、そうかもねぇ。。」
私は曖昧に答える。隠すつもりは無いけれど、話すのにも少し勇気というか勢いが必要だ。

「ちょっと、ちゃんと話しなさいよ。何か悩んでるんでしょ?」
「うーん。悩みと言うか、何も問題はないのです。」
「それが、問題ない人の顔?」
彼女達に隠し事はできない。

「好きな人ができまして。。」
「このタイミングで好きな人かぁ。あんたもやるわねぇ。」
「どんな人?どこで知り合ったの?」
 6年付き合った彼と婚約したばかりの私が、「好きな人ができた」と言って、この反応。

 私は地味を絵に描いたような女だ。理系女でオタク。お化粧もおしゃれも最低限。趣味は読書に絵画鑑賞。恋愛なんて一生縁がないと思っていた。
 この歳になって初めて恋に落ちた相手は、イケメンではないけれど、私の好みの容姿で、明るくて、話題の豊富な人だった。ひと目で恋に落ちた。そして驚いたことに、彼の方も最初から積極的だった。付き合っている人がいるからと断っても、そんなの知ったことかと、グイグイ押して来た。男らしくて、私の知らない世界のことを、楽しそうに話してくれた。