「で、葉子は相変わらずNothing?」
「そ。亜由美も?」
「私も相変わらずだよ。」
「イイ男との出会いは無かったの?」
「全然ってほどでもないんだけど。今は仕事が面白くてね。」
「そんなこと言ってる間に、すぐ三十路になって、あっというまにババアになっちゃうわよ~。笑。」
「あ~そうかもねぇ。。」
 亜由美はそんなこと全く気にしてないみたいに、陽気に笑う。

 大学を卒業してもうすぐ5年。仕事も既に新人ではない。人生の選択を次々に迫られる私達。
 昔はここに香織がいた。この春2人目を出産し、育児ママになった香織は、もう誘っても来られなくなって久しい。ヒロミチくんと結婚したら、いずれ私も子供を産むのだろうか。夜の女子会も、休みに気軽に海外旅へ行く事も、しばらくどころか、二度とできなくなるかもしれない。
 でも、少し名残惜しくても、高校を卒業したように、この夜の女子会を卒業しなければ、進めないステージもある。ただ。
 
 私は本当に次のステージへ進みたいのかな。ここに居続ける勇気がないだけなのかもしれない。
 化粧を落とした美樹の頬にはほうれい線が浮かぶ。

「飲もう。飲もう。」
「そうだ。飲もう。」

 私達は東京のどこよりも高価な夜景を眼下に見ながら、ワインのグラスを傾ける。この夜をもうすぐ卒業するであろう自分、多分、一生卒業しないだろう葉子。美樹や亜由美はどんな生き方を選ぶのか。