「で、今度はどんな人なの?」
 私は輸入品のナチュラルチーズを皿に並べながら美樹に尋ねる。

 都内随一の高級ホテルの最上階の一室。窓際のテーブルには、外国土産の高級ワインの瓶が2本。

「どうせまた小太りの汗かきおじさんなんでしょ?」
 葉子が言うと、

「容姿なんかどうでも良いでしょ。男は中味よ。」
 美樹は生ハムの封を開けながら笑う。

 華やいだ美樹の表情を見れば分かる。付き合い始めて3ヶ月というところだろう。今が一番楽しい時期だ。

 男は中味と言いながら、彼女の選ぶ男は、イケメンではないけれど毎回似た容姿だ。単に彼女はオヤジ顔のデブが好きなだけなんだと思う。

 記念日でもなんでもない日曜の夜。閑散期に組まれるレディーズプランを利用して、私達は高級ホテルのスゥィートで、女子会を開く。
 エキストラベッドを入れてもらって3人で泊まれば、格安で最高級の夜を満喫できる。部屋に持ち込んだワインとつまみ。これからがガールズトークの本番だ。


 私達3人は県下で1.2を争う進学高校を卒業した同級生だ。友人の多くが一流大学を経て一流企業へ総合職で就職した。
 入社5年目。もはや新人ではない私達は少しずつ大きな仕事を任されようになったし、婚活だって今が最高値。恋に仕事に最も忙しい年代だ。この女子会も本当に久しぶりだ。

 都内に近いベッドタウンの実家に寄生し、男性のように車を買う必要も無ければ、嫌な上司に誘われることも、部下に奢ったりもしない。クリスマスはホテルもディナーも男が払う。そんな私達はある意味、無敵だ。
 こんな部屋、彼にだって用意できないし、用意されたらかえって重たい。自分の金を払ってこその、心からの贅沢。