駅の改札の前で、
聴きたくなくても、
聴こえてくる威勢のいい声。

人混みの中誰かが
何かを訴えながら、
頑張っているだろう風景。

宜しくお願いします、と
甲高い声で
チラシのような物を
恩着せがましく渡されるが。

受け取らずに
人混みを避けて、
サッと素通りする。

随分前の私なら
断われないまま、
苦笑いしながら
受け取っていたかもしれないが。

朝っぱらから、
誰かの何かに関わる程
今の私の朝には余裕がない。

慣れた手つきで改札を過ぎると、
時間も確認せずに、
いつもの定位置に。

通勤という事に慣れると、
面白いものでだいたいの感覚で。

いつものホームの
いつもの定位置に、
着きさえすれば何も問題はない。

約五分も待てば、
いつもの流れに身を任せれる。

視界に入ってくる物も、
よくあるいつもの光景だ。

休日明けの会社に行くのは、
もちろん憂鬱だが。

これまた慣れた感覚だ。

そんな感情とは裏腹に、
ため息だけは勝手についている。

あ、白っ。

吐くため息の白さに、
季節の変化に気づかされる。

どうりで最近やたら寒い訳だ。

カレンダーを確認すると、
もう11月も終わりそうな日が
表示されている。

あ、今年も終わる。

年末年始やたら、
人の幸せが強調される季節が
また今年も訪れる。

羨ましいとは思いつつも、
自分とは無関係な
イベントが続くと思うと、
やっぱりどこか憂鬱だ。

自然に出ていたため息も、
自分の感情が
入ることが分かると、
やたらと白さが増して見えた。