そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!

本気で言ってる、の言葉の代わりに、私の肩に手を置いて、顔を近づける大輔。

......。

大輔からのキスを受け入れるべきか否か。

どうしようか考えていると、上から声がふってきた。


「ちょっと待ってください」 


その声に大輔から距離をとり、顔を上げると、目の前にはジムに似つかわしくないスーツ姿の慎吾が立っている。


「......慎吾?」

「探したよ、真由。
土曜も日曜も家にもいなかったし、電話にも出てくれなかったから、絶対に今日話そうと思ってた」


いつものように優しい声でそう言った慎吾は、少し疲れたような顔をしながらも、真剣な表情をしている。


「......どうしたの?」


どうしたの、も何も、金目的で近づかれた上に捨てられたわけだ。

恨み言のひとつも言いたくなってもおかしくはない。

いや、恨み言どころか、会社中にあることないこと言いふらされても、全くおかしくはない。