数分間お互いに「好き。」と伝え続けていた私達は、この空き教室に住み着いている彼の存在を忘れていた。
「あれーイチャイチャしてるカップル発見。」
足音も重たい扉が開く音も、いっさい大きく立てなかった大樹は、扉に凭れて私達をからかう。
「横場…お前いつから。」
後ろで大樹と話す暮くんの表情は分からなかったけど、声色が優しかったので大樹に嫌がってはないんだな。と嬉しくなった。
「ついさっきだよ。二人が此処にきて、キャッキャウフフってし始めた頃かなあ。」
「一番最初じゃねえか。」
「えーこれでも俺が一番最初に居たんだよお。」
「はいはい、それは悪うございました。爽ちゃん行こう。そろそろ天達を探しに行かなきゃ。」
「う、うん。」
暮くんから差し出された手を取り立ち上がる。大樹は、それを凄く穏やかな瞳で見つめていた。
それから空き教室を三人で一緒に出た。「俺も行く。」と付いてきた大樹に、嫌がってはいるものの、暮くんは楽しそうに大樹と話していた。二人の会話を聞いていると暮くんの新しい一面を見れて、自然と頬が緩んだ。
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