「チィ、腹空かないか?」
「空いた!え、買いに行ってもいいの?」
「良いよ。何がいる?」
「うーん…あ、ふふふ。私も一緒に行く!さやたんの分も買ってくるから、どこか座って待っててね。」
「あー…じゃあ暮人の分も買ってきてやるか。」
「じゃーねー。」と、走り去る千秋ちゃんを、後ろから追いかける天。突然な行動と二人の雰囲気が、前よりも穏やかなモノに変わっている気がして、それに爽ちゃんも気付いたのか、二人で首をかしげた。
たまたま外回りをしてたからか、屋台の多い中庭であの会話を繰り広げたアイツらは、多分わざとだ。メッセージを受信したことを告げるバイブがポッケを揺らせば、表示されたメッセージは案の定二人からで思わず爽ちゃんと笑ってしまった。
「探してください。って。」
「ふふ、千秋ちゃん可愛い。」
「千秋ちゃんめちゃくちゃ食べてるじゃん。」
写真つきで天から送られて来たソレには、千秋ちゃんがお好み焼きやフランクフルト、わたあめを両手一杯に抱えて満面の笑顔を浮かべている写真だった。
「こう言うのって探さないでください。じゃないの。」
「どうして?一緒に回ってるから探してくださいじゃないの?」
天が気を回して生まれた二人きりの時間は嬉しい。が、余りにもそれが短いと抗議をする。隣の爽ちゃんは二人きりになった事なんて分かってないようで、「早く迎えに行こう。」と先を急いだ。
(やっぱ俺だけなのかな…。)
暗くなっててもしょうがないと先を歩く爽ちゃんの手を取る。「腕持って。」と腕に爽ちゃんの手を添えれば、真っ赤な顔で爽ちゃんが微笑んでくれたからネガティブもどうでも良くなった。
「爽ちゃんお腹空かない?どうせなら食べながら行こうよ。」
「千秋ちゃん達も食べてたもんね。そうだなぁ…暮くんは何が食べたい?」
「俺は焼きそばかな。」
「ふふっ。」
「どうしたの?」
「暮くんと二人で回れるなんて考えてもなかったから、美コンのお仕事中だけど嬉しくなっちゃった。」
(神様…俺の彼女は女神でしたか。)
「超可愛い…。」と言い表せない感動を感じながら、焼そばの列へ並ぶ。以外と屋台は混んでなくてすぐに買えた。
腕を軽く組んで、焼そばを持って歩くウェディングドレスとタキシードと言う異様な光景は、爽ちゃんと言う魔法がかかって誰も気にはならなかった。
(爽ちゃんが持てば百円の焼そばも何千万円に見えるから不思議だよな。)
焼そばの屋台のクラスが、衣装が汚れるからと机と椅子を貸してくれたのでテントにお邪魔して焼そばを食べた。その時に白雪姫の衣装をした天達の事も聞いてみれば、少し前に来て綿菓子の店に行ったと教えてくれた。二人で話ながら焼そばを食べ、「ご馳走さまでした。」と店の人に言う爽ちゃんは、男子からも女子からも真っ赤な顔で見つめられていた。
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