私に作り笑顔を見せる三人が帰って行くと、私は憂臣が待つ教室に戻った。
「 みんな、帰ったな 」
「 みたいね 」
「 なぁ、里桜って呼んでいい?」
私が彼女だから?
「 いいけど… その前に教えて?どうして私なの?他にいくらでもキレイな子いるのに… 」
「 どうしてって、人間中身だろ?」
中身……
私の中身は 真っ黒…
何も知らないのに。
「 藍沢くんの中身はいい人?」
「 俺? 俺は… 黒いな、っていうか黒かったな… 」
黒かった?
過去形…
「 どんな黒? 自分の噂知ってる?もしかしてヤンキーだったとか?」
私の問いかけに 微かにピクッと反応した憂臣。
「 はは… 何でかな、里桜には見透かされる気がするから嘘つけないな 」
苦笑しながら私を見る憂臣。
私はそんな憂臣から視線をそらしてカバンを手にして机に置いた。
静かに私の手に手を重ねる憂臣。
「 みんな聞かないけど、今 転校生っておかしいだろ?俺… 」
「 興味ないから。誰かの過去なんて興味ないから 」
手… 震えてる?
「 興味ないか… すげぇな。俺… たぶん誰かに聞いてほしいんだ、里桜、聞いたフリしてくれてていいから 」
聞くフリ?
どんな黒いものを抱えてるのか、私は憂臣の暗さを知ることになるなんて誰が思う?