この時の私は…

憂臣と付き合う事に特に抵抗を感じず、引くことも、照れて真っ赤になる可愛さもなく、逆にこんな私でいいのかと不思議に思うくらいだった。

そんなある日女子トイレで私は聞いた。



「 ねぇ、聞いた?あの委員長が憂臣くんと付き合ってるらしいよ… 」

「 あ、私も聞いた!なんかさ、帰りに手繋いで歩いてるの見たって聞いたよ 」

「 うっそ~ あり得ないって!なんで、マジなの?気まぐれ?」



トイレは噂話に最適な密室。

誰が聞いていても関係ない。

だから広がる噂。

そして、噂の主は誰かなんて 誰にもわからない。

やっかみや嫉妬、自分の方が勝っているのにと誰もが思う。

些細な気持ちの破片は見えないまま大きくなるだけ。


静かになったトイレ内で私は足を組む。

話をしていた女子たちの声に聞き覚えがあった。


同じクラスの亜衣香、栞、小絵の3人。


クラスでもイケメン男子にしか興味を示さない。

私から見て大差ないと思うほど普通。

ずば抜けて可愛いわけじゃない子ほど騒ぐ。

そして、教室に戻ると 3人はコソッと打ち合わせたように見合ってから私の席にきた。



「 ねぇ、委員長さぁ ちょっと小耳に挟んだけど 藍沢 憂臣と付き合ってるって ほんと?」



そう聞かれて 私は頷いた。



「 断ればいいのに… 委員長、遊ばれるよ?別れたら?」

「 そう言われても、私から 付き合ってほしいって言ったわけじゃないから… 」

「 あっそう、そんなに自信あるなら付き合ってみれば?どうぞ。そのうち捨てられるから~ 」



悔しいの?

自分が付き合いたかったって言えばいいのに…