「寝坊ですか?」
亀井くんが笑いかける。

「髪、ハネてますよ」

え、うわって髪をゴシゴシ撫でつける。
すると長い指が伸びてきて、わたしの髪を一房つまんだ。

「なんか、寝起きって感じで、ソソられる」

ソ、ソソるって……
そういうことサラッて、なんで言えるかな……。

狼狽するわたしを見て、亀井くんの瞳がおもしろそうに瞬いた。

おぉおおぉ、って部内のみんながにやにや視線を交わしてる気配もあって。
もう、勘弁してよ……って、わたしは朝からぐったりしてしまう。

「奈央さん」

もおおっ! 
「はいっなんですかっ?」
うわ、声が裏返っちゃったじゃない。は……恥ずかしい。

「新田自動車のタイアップ、オレが引き継ぐんですよね? 資料もらえますか?」

え? あ、あぁ仕事の話か。
「あ……うん」
内心焦りまくる。
切り替え、早すぎじゃない?
「ちょっと待って、今プリントするから」