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重厚なドアが、わたしの前で開いた。


仄明るい間接照明が照らし出す廊下が、細長く伸びていく。

付き合い始めてから知ったけれど、工藤さんはかなりのワイン好きだ。

使っていない部屋もいくつかある、というファミリータイプのマンションを独り暮らしの工藤さんが購入したのは、ひとえにワインのためらしい。
温度と湿度を完全にコントロールできる、ワインセラーに改造するための部屋を探して、たどり着いたのがここ、なのだそう。

でも疲れた足に、こんなくねくね長い廊下はちょっと……なんて、口の中で小さくぼやきながら歩いていくと。


「うわ……」
無意識に感嘆の声が漏れていた。

間仕切りを一切取り払ったリビングダイニング。

足を踏み入れるとすぐに、高さを出した天井いっぱいまではめ込まれたガラス越し、ジュエリーボックスをぶちまけたような夜景が目に飛び込んでくる。

「相変わらず、素敵なお部屋ですね」

わたしが言うと、ネクタイをゆるめた工藤さんはちらっと笑って、「ちょっと座ってて。すぐできるから」とキッチンに入っていく。