一度だけ。 退院の前に、下に下りてみたんだ。 でも、どうやって声をかけたらいいのか分からなくて、うろうろしてたら。 「どうしたの」 ビクッ! 後ろから、声が聞こえて。 振り返ると、 「あ…………」 『あの子』だった。 「俺たちんとこ、混ざる?女の子もいるよ」 にこっ、て。 私にも、笑いかけてくれたんだ。 「あっ、ありがとうっ! でも、入れないや、ごめんね。」 少しの運動でも、血管が危ないから。 やりたくても、やれなかった。