謎解きソルフェージュ

無駄と知りつつ、名を呼び身体を揺すり脈をとり、妹が血の海の中でこと切れていることを確かめた四月朔日 和也。

そのときは、すぐに警察に通報するつもりだったらしい。

立ち上がってふと、かたわらに散らばる食材が目に入った。

買い物をして帰宅した美也が、手に提げていたスーパーのビニール袋。床に落ちて、中身がこぼれたのだ。

卵のパック、ケチャップ、鶏のもも肉・・・
自分のためにオムライスを作ってくれるつもりだったのだと、その中身は物語っていた。

美也自身はあまりオムライスは好きではない。でも兄の好物だから、今夜はオムライスにしよう。
そんな妹の思いやりを、今夜囲むはずだった食卓を、富樫 道夫は蹂躙し、奪った。

もう自分は二度と、妹の作ったオムライスを食べることはできない。

そのことが許せなかった。どうしても———


和也はそう動機を語っているという。