謎解きソルフェージュ

路地の奥で、看板も出していない。
商売っ気のないたたずまいからして、客は自分たちふたりだけだった。

「こちらの店にはよくいらっしゃるんですか?」

うん、と返事がある。
「家の近くにあって、込まないから。重宝してる」

「たしかにそうですね」
とうなずき返す。

打ち解ける、ほどではないけれど、言葉のキャッチボールくらいはできるようになった。

「牧教授とも来たことがあるんですか」

「まぁ、そうだな」

「教授とはときどき会うんですか?」

泉が一瞬視線を落とす。
「ろくでもない用件ばかり持ってくる」

どこか投げやりな語調だ。

「そんな・・・」
尊敬する師をそんなふうに言われたくはない。