謎解きソルフェージュ

純粋な映画と自分がおかれた状況の対比に、不意にこらえていた涙がこぼれそうになる。

「わかり、ました」
ごくりと息をのみこんで言う。
「・・・もし、もしあなたの推理が当たっていて、犯人が逮捕されたときには・・・その時には、あなたの言う通りにします」


泉はかるく肩をすくめて「交渉成立だな」と言った。
相も変わらず無感動な口調だ。

「川瀬鞠子」
フルネームで呼ばれて、思わず「はい」と身構える。

「交渉成立ということで、何枚か手札を見せておこう」
泉から語りだした。

「そうだな、『卍殺人事件』と呼ばれているが、まず卍自体に意味はない。ナチスや宗教と関連づけて捜査するのは、時間と労力の無駄だ」

えっ、と鞠子の喉から声が放たれる。

「じゃあなぜ犯人は犯行現場に卍を書き残すような真似をしたんですか?」