謎解きソルフェージュ

犯人がより慎重になったのか、それとも女性である美也と違い抵抗に遭うことを警戒したのかは、不明だ。

血の海につかった富樫道夫の遺体のわきには、血で書きつけられた「卍」の一文字。

犯行手口、創傷、そして現場に残された血文字から、四月朔日 美也の殺害事件と同一犯によるものとみられた。
それにより、警視庁に合同捜査本部が設置され、警察内部では通称『卍殺人事件』とよばれるようになる。

もっとも、現場に残された血文字のことは、マスコミには一切公表されていない。捜査関係者しか知り得ない極秘情報であり、『卍殺人事件』という呼び方も対外的にはタブーだ。


———第三の事件はそれから約二ヶ月後。今年の二月のことだ。

三人目の犠牲者は、皆本 弘人(みなもと ひろと)。
三十九歳男性、港区に本社をおくイベント企画会社の営業マン。
千葉県市川市在住。既婚で専業主婦の妻と保育園に通う娘がいる。