謎解きソルフェージュ

捜査に関係のない鞠子がそんなことをする必要はない。
この書類を見たり触れたりすることさえ、本来はNGのはずだ。

「・・・卍(まんじ)殺人事件、か」

泉が口にしたのは警察内部での通称だ。
世間的には『都内広域連続刺殺事件』である。

「じゃあプレゼンぽく、事件の概要を説明してくんない?
一から読み込んでくのも面倒くさいし」

また面倒くさい、って・・・どんだけわがままな坊ちゃんなのよ?
箸より重い物は持ったことがないとか、そういうレベルか。

お言葉ですが、と声がとがらないように注意しながら言う。
「わたしは書類を運んだだけです。警察の内部資料を読んでいい立場ではないので…」


「言わなきゃ分かんないよ?
それにそうやって調べてきたってことは、事件に興味があるんでしょ」

こちらを見上げてくる。不思議に透きとおった瞳だった。なんの感情も読みとれない。