謎解きソルフェージュ

「あ、あの・・」
ようやくここへ来た目的を思い出し、口を開く。

「はじめまして、川瀬鞠子と申します。牧教授の代理で、資料を届けに参りました」
一息にそう言って頭をさげる。口上としては、上々だろう。

「どうも・・」

想像以上にそっけない声だ。
そうとうの変わり者、という教授の人物評があらためて思い出される。

「こっちに持ってきてくれない?」

「あ、はい」

女性に手を貸そうともしないなんて・・まぁいいか、届けるのが任務だ、鞠子。
自分に言い聞かせる。

ソファまで回ると、その前にはローテーブルがあった。

「テーブルの上でよろしいでしょうか?」

「ん・・・」

是、と解釈して、テーブルの上にアタッシュケースを乗せる。
ローテーブルの形状は箱形で、天板に四角い継ぎ目があるのに気づく。ひょっとしたらここに、スピーカーや操作パネルなんかが内蔵されているのかもしれない。

さて、とりあえず任務完了だ。
お茶が出てくる雰囲気でもないし、さっさとおいとましよう。