謎解きソルフェージュ

まず目につくのは、部屋の両脇を占める本棚だった。天井まであり、そのすべてに本がぎっしり収められている。
貴族の書斎といった雰囲気の部屋だ。

床には絨毯が敷かれ、窓を背にどっしりしたデスクが据えられ、そして来客に背をむけるかっこうで、茶色い革の大きなソファセットがある。

あれ、水埜さんは・・・?

と、ソファの背もたれから、にゅっと手の先がのぞいた。長い指がソファの背をつかみ、体を起こす気配がある。
どうやら部屋の主は、ソファに寝そべっていたようだ。

やや癖のあるやわらかそうな髪、たれ目気味の双眸、ほそい鼻筋、と水面からのぞく潜望鏡よろしく、ソファの向こうから青年の顔があらわれる。
こちらへゆったり顔を向ける。

男性の顔立ちを、精悍と繊細に区分するならば、間違いなく後者だ。日焼けや逞しさとは無縁。
肌や髪、瞳の色素までも薄そうだ。