ふいに、

「木下さん。」

自分の苗字を呼ばれているのに気づき、慌てて声のした方向へと顔を向ける。

そこには、私に鋭い視線を注いでいる、柴白先生が教壇に立っていた。

「ホームルームの途中です。話は聞いていましたか?」

今だに鋭い視線をきかせながら、先生はいつもより、1オクターブ程低い声を発した。

そうだ、今はホームルームの時間だ。自分の不機嫌顔を直してる場合ではない。

それに先生は怒っている様子である。

となれば、よっぽどその話が大事なものだったのだろう。

「……いいえ、…すいません。」

弱々しい声が口から漏れた。

普段、柴白先生は優しい。だから、余計に申し訳なくなってしまった。

先生すいません。声にはださず、彼女にもう一度謝った。

それを察したのか、先生は強い口調で呟く。

「いいですか、今日は転入生が来るかもしれません。」