キミに会うたびふえる好き



「あっ…」



突然、頭上でした声に望天と柚姫音は顔をあげた。


望天と柚姫音は朝食へ向かうため話をしながらエレベーターを待っていた。



「あ、諫海。おはよー」



相手に気がついた望天はあいさつをする。


声を発したのは同じく朝食へ向かおうとしていた諫海だった。



「おう、柚姫音、望天。おはよう」



いつもあいさつをするのは望天だ。

それでも呼ぶ名前はいつも柚姫音の方が先。


その時点で諫海の柚姫音に対する想いは手に取るようにわかる。


諫海って絶対無意識だよなぁ〜…ゆきちゃんも、気づかないのかな?

てか、ゆきちゃんのついででわたしにあいさつしてるように感じるんだけど?



「望天、柚姫音!おはよ!!」



ヒョイっと諫海の後ろから顔を出したのは爽やか少年の早矢仕 灯夜 (はやし とうや)。


こちらもまた、高身長なイケメンである。


灯夜も旗振りの1人。


諫海も灯夜も人口の多そうな名字の読み方。

なのになぜ、2人とも漢字が珍しい方なんだ。


早川と林でもいいと思う…



「灯夜…なんか、また背伸びた?」



隣に並ぶとよくわかる。…背が高い!!



「んー、わっかんね!一々はかってねーもん。でも、望天は相変わらずチビだな。」


「はぁ?チビじゃないし!」


「152センチとかちっちゃすぎるだろ?な、そう思うよな諫海!」



世界中の152センチの人にあやまれ。



「灯夜。望天に失礼だからチビとか言うのやめなって。」



…毎回おもう。

諫海がかばってくたのはわかるし、それについてはうれしい。


でも…灯夜の言葉よりも優しい諫海の言葉の方がココロに突き刺さる。


無自覚で言ってるだけに辛い。


チビにはチビなりの悩みってもんもあるんだ。

背の高いきみたちには一生わかんないよ。



「望天たち。エレベーターきたよ?」



と、ゆきちゃんの声がかかる。


わたし達が言い合い(?)をしている間にエレベーターがきていたみたいだ。



「え、あ、ごめんごめん」


「望天、ごめんは1回ね?」


「スミマセン。」



ゆきちゃんにダメだしされちゃった…


わたしたちが乗り込んだのを確認すると、1階のボタンを押した諫海。そして…



「あれ?柚姫音ってネックレスしてた?」



と、早速気がついた様子。



「えっと…朝、望天がくれたの。」



ゆきちゃんは諫海を前にするとあまりしゃべらなくなる。

だから…



「ど〜お?このネックレス、ゆきちゃんにめっちゃ似合ってると思わない?」



たまにわたしが助け舟をだす。

ゆきちゃんたちには、上手くいってもらいたい。



「…うん。すごく、似合ってる…その、か、わいい…」



大丈夫か、というくらい顔を真っ赤に染め上げて言った諫海。

諫海にしてはすごく頑張った結果の言葉だとおもう。


その言葉をきいて諫海と同等か…

それ以上に顔を真っ赤に染め上げたゆきちゃん。


思わずニヤついてしまう。



「ちょっと、望天。ニヤつくのやめてもらえる?」


「諫海。スミマセン、わたしは元々こんな顔なので。」



片手で顔をおさえながら諫海が望天に抗議した。

まぁ、さらりとかわした望天なのだが…


わたし以外にもう1人ニヤついてる人がいますが?

いや…ニヤついてはいないか。必死に、肩を震わせて笑いをこらえてるけどな。



「ほらほら、お2人とも。そろそろ1階につきますよ、顔をもどして」



そういってすぐに扉が開いた。


2人とも…ここまであからさまな反応してるのに、なんで気づかないのかな?

お互い顔真っ赤なのに。自分のことで精一杯なのかな?


そう思いながらわたしもニヤついた顔を通常に戻す。

チラリ、とうしろを見れば灯夜の笑いもおさまっていた。