キミに会うたびふえる好き



「ゆきちゃ〜ん?」



中々返事をしない柚姫音に再度声をかえる。



「望天!準備終わった?」



今度は反応した柚姫音。

うつむかせていた顔をあげ望天を見上げた。



「うん、行こっか?」



「いつも急かしてごめんね。1人じゃ行く勇気なくてさぁ〜」


サバサバした性格の柚姫音。

優柔不断なところがある望天とはちがい、何事も即決。


行動力もあるのだが…さすがに、恋愛面ではその行動力は発揮できないみたいだった。



「いいよ、いいよ!わたし、朝1人じゃ起きれないから起こしてもらえて助かるし。他にもゆきちゃんにはいろいろとお世話になってるからね!」



眉根をさげ、申し訳なさそうにする柚姫音に望天は笑顔でこたえる。


いつも頼ってばかりの望天は、柚姫音に頼ってもらえることがうれしい。

どんな些細なことであっても…。



「早く行こ!!たぶんもう、諫海たちきてるとおもうよ!」



諫海とその友だちは同じ部屋に泊まっている。

2人はいつも朝はやく起きて人よりも早く朝食を摂る。


理由は知らないけどね…

おじいちゃんか!って思うほど朝はやいよ笑


望天の声に反応し柚姫音は重たそうに腰をあげる。



「あ!!そうだ、ゆきちゃん待って!」



と、望天がなにかを思いだしたように声を発した。


そして部屋の扉に向けていた足を反転させるとそのまま自分の荷物の前まで行きしゃがみこんだ。



「望天…?」



望天の行動の意味がわからない柚姫音は頭に ? マークを浮かべる。


一方、望天は自分のカバンを漁っている。



「あったあった!これ!」



じゃ〜ん!という効果音をつけながら望天が取り出したモノはネックレス。



「一昨日、買ってきたの!わたしとゆきちゃんでおそろいだよ!」



実はあの迷った日、つきとさんと別れた後にすぐには帰らずアクセサリーショップに足を運んでいた。


そこで購入した2つのアクセサリー。

バラとハートが組み合わさったもので色違いのもの。


結局行けなかった和菓子屋には昨日、ゆきちゃんに案内してもらいながら行ってきた。



「ゆきちゃんって、あんまアクセとかしないでしょ?」



柚姫音はあまりアクセをつけない。持っていない。


柚姫音の服はシンプルなのが多いから、物足りなく感じることがある。



「たまにはつけて欲しいな、と思って。…どうかな?」



ネックレスは柚姫音の雰囲気によくあうものだった。

望天が自分のために悩んで、選んでくれたのだとわかった。


柚姫音は今まで、誰かにアクセサリーなどのプレゼントを貰ったことがない。


だから望天からしたら、あまりたいしたことのないことかも知れない。

でも、柚姫音にとっては初めての経験でとてもうれしい事だった。



「ごめんね、高価なものではないんだけど…ゆきちゃんに似合うとおもって!」



安物でも、なんでもいい。



「ううん、ありがとう。すごくうれしい!!今からつけてもいい?」


「もちろん!…あ、でもよさこいの時ははずしてね?」


「あ、そっか…うん、わかった!」



柚姫音がネックレスをつけている間に、望天も自分のをつける。


2人共つけ終わったところで朝食へ向かった。