キミに会うたびふえる好き



「みあって天然?」


「ちがいます。」



望天はハッキリ、キッパリと否定した。


この人…"方向音痴" だの "天然" だのいろいろと失礼だよ…



「天然のやつはみんな、そういうんだよな。自分で気づいてない、自覚してねーだけなのに。」



月都の親しい人の中には "天然" な人がいるのだろうか?


…言い方がいるっぽいな。



「わたしは、気づかないほど天然ではないので。」


「まぁ、そういうことにしておくか。…ほら、大通りにでたぞ。」



いつの間にか大通りにでていた。


スマホをみる。歩き始めて約10分、といったところか。


しゃべりながら歩いていたから、5分くらいしか時間が経っていないように感じる。


結構、迷い込んでいた。


なんにせよ、無事(?)に生還することができたんだ。良しとしよう。


失礼なことを言われたとしても助けてくれた、案内してくれたのには変わりない。


…お礼、言っとくか。



「あの、…案内ありがとうございました。」


「......。」


「...?」



え、また無言なの?このまま帰っちゃっていいのかな?

なにか言葉を交わして さよなら とかじゃないの??



「なんか、お礼とかねーの?」


「…は?」



何言ってんだ、こいつ。


人助けをしてお礼をさせるのか。

ボランティアとか、そーいう言葉を知らない人間か。



「お前、今ぜってぇー失礼なこと思ってんだろ。」



声に出てなかったはずなのに…なぜわかる?



「思いっきり表情…顔にでてるから!」



そしてまた フッ と笑った月都。

見とれてしまうほど美しい笑い方。恐ろしいほど整っている。



「で、お礼。してくれんの?してくれねーの?」



さっきまでの明るめの声とは反対に、ワントーン下がった少し低めの威圧的な声。



「……なに、をすればいいんですか?わたし、今あんまりお金持ってないんですけど。」



和菓子屋だけに行くつもりだったので、まとまったお金はホテルに置いてきている。


あまり高価なお礼を要望されてもムリ。



「それはお礼、してくれると受け取ってもいい?」


「…?はい。」



ニヤリ、と何かを企んだような笑みを浮かべた月都に望天は戸惑った。



「OK、じゃあ行くぞ!」



月都は望天の手首をつかんで大通りを歩きだす。


…駅の方へ向かってる?


信号を曲がるなど、どんどん駅へ近づいている。



「行くって、どこに行くんですか?」



グイグイと腕を引っぱられて、ついていくことしかできない。



「とりあえず、駅の方!カフェでも入ろうぜ!!」



やっぱり駅か。


その表情はさっきほどまで見せていた、鼻で笑ったようなものではなく少し子供っぽい純粋な笑顔。


…こんな顔もするんだ。


大人っぽいしもっとクールな俺様かと思ったけど。

カフェ行けるのがうれしいのか、楽しそうにしていて案外純粋な好青年なのかも…


駅の近くなら何かはあるだろ、 と月都はつけたす。


そういえば…最初、つきとさんもここら辺には詳しくないと、よく知らないと言っていた。



「つきとさんって、ここら辺に住んでるんじゃないんですか…?」



観光で東北にきたのだろうか?

だとしたら、わたしに時間をとらせるのはもうしわけない。



「俺、高知の人間だよ。ここには祭りで遊びにきてそのついでに観光でもしようかなーってぶらぶら歩いていただけ。んで、望天をみつけて声をかけてみた。」