《 望天side 》
わたしはよさこいチーム「 漣 (さざなみ)」の踊り子兼インストラクターをしている若狭 望天( わかさ みあ )です!
そして!!
今はなんと、明後日開催されるよさこい祭りに参加するために
漣(さざなみ)のみんなで東北にきています!
今期はじめてのお祭り。
ハッキリいって、めちゃくちゃたのしみテンションアゲアゲです!!
………さっきまでは。
「......」
わたしは今、もしかしたら人生最大のピンチを迎えているかもしれない。
…絶賛迷子なうです。
「ハァ〜...ここどこぉ…?」
観光を満喫しようとおもいチームのみんなと解散した。
それぞれ自分の行きたいところへ行こう、と。
それからわたしは持ってきていた観光用のパンフレットと地図をみながら歩いていた。
鎌倉時代からあり、とても美味しいという和菓子屋を目指しながら…
なのに、なぜこうなった?
わたしは方向音痴でもないはず。
「もと来た道を戻…れ、ば…」
と、思ったのだが。
既に来た道すらわからない、
というよりも道らしい道が見当たらないのだ。
辺りを見渡しても、山、山、山…スマホは圏外。
少し前までは都会風の街にいたはず。
「…詰んだ。」
高校生にもなって迷子とは、情けない…
迷子だと気づいてから1歩も動けずにいる。
ただ、ボッーと立っているだけ。
「…何してる?」
...ん?今、声かけられた?
こんな所に人がくるの?
「おい」
「えっ、あ、はい!」
声をかけてもなかなか返事をしない望天にシビれを切らしたのか、もう一度声をかけてくる。
振り向くとそこには、顔面偏差値がとても高い、
世にいう "イケメン" という言葉がピッタリであろう男の子がうしろに立っていた。
「さっきから何つったってんの?」
さっきから…ということはずっと見ていたのだろうか。
キョロキョロと辺りを見渡し続ける望天は、はたから見ればさぞかし不審者にみえただろう。
…そう思うと、恥ずかしい。
「えーっと、その…道に、迷ってまして。大通りにでる道、わかりませんか?」
望天は恥ずかしさに少し顔を赤らめながら答える。
「......。」
「......?」
そして、男の子は無言。
なんで、無言!!
何か反応してください。あなたが声をかけてきたんだよ!?
この女、いい歳して迷子なわけ?
ダッサ〜とか思ってるんでしょう、どうせ!!!
「いや、べつにそんなこと思ってねぇよ。」
は?
「声にでてるから。…俺、ここら辺のことはよく知らねぇけど。とりあえず、ついて来て」
思ったことが口にでてしまうのは、焦ったときの望天のクセ。
焦ってないように見えて内心、実は結構焦っていたりする。
…と、そんなことより
「道わかるんですか?」
率直な疑問を投げかけた。
男の子は自分と同じで迷子になっていたのかと思った。
「さっきから」と言うから彼も迷い、
困って立ち止まっていたのかと…
