こうやってこの車でこの道を通るのも最後なのかな……



そう思うと卒業したわけじゃないのに、あたしのほうが悲しくなってくる。



窓からの景色を目に焼き付けるように、あたしは窓ガラスにへばり付く。



2年間……



あっという間だったけど、色んなことがあったよな。



この道だけでも思い出は沢山ある。



「そう言えばさ、今日忙しいって何かあんのか?」



あたしは視線を豊へと移す。



目をつぶったまま動かない豊の代わりに翔が答えてくれる。



「最後の暴走。俺等、今日で引退だから」



「そうなの?」



「本当はまだ少し雪が残ってるから危ないんだけどね……毎年恒例だから」



「そうなんだ……」



また、あたしだけ知らされてないのかい。と豊をキッと睨み付けた。



寝てるから気付かないだろうけど……



すると「なんだ」と目を閉じたまま怖い声を出す豊。



豊は何で目を閉じていてもわかるんだよ……



睨んだくらいで気付くならあたしの質問に答えやがれ。



あたしは腹が立って豊の足を踏んずけておいた。



もう履く事もないだろうローファーを……