「俺の卒業が悲しくて泣いてるかと思えば、半開きの口から涎垂らしながら居眠りしてるなんてな」



あたしの前で足を止めた豊が全校生徒の前でふざけた事を言いやがる。



「まっすぐ退場しろよ」



あたしは寝ぼけた思考回路を必死に繋ぎ合わせ、豊を見上げる。



ゾロゾロと並んで歩く長い卒業生の列を見ながら、考え事をしていたらいつの間にか眠ってしまっていたあたし。



「お前も一緒に卒業すんぞ」



そう言った豊はあたしを抱え上げ、列に戻り退場する。



「何してんだよ!!離せ!!」



学ランのボタンが体に当たって痛い。



それに、こんなことされたら明日から注目の的になるだろうが。



ジタバタ足を動かすけど、豊はそのままあたしを玄関のほうへと連れて行った。



「教室行かないのか?」



「話がある」



急に真面目ぶった豊はあたしを降ろし、その場に腰を降ろした。



卒業式に改まって話があるなんて言われたら……



身構えてしまう。



よくない言葉がその口から出てきそうで……