そんな光景を見ていた宗もブルブルと体を震わせ、逃げようとしたけど豊に捕まってしまう。



「もう二度と俺達の前に姿を現すな」



豊はそう言って、宗を逃がすつもりだったんだろうけど、あたしが宗を引き止めた。



ここで宗と別れてしまったら、きっと宗は同じ事を繰り返す。



なんだかあの時はそんな気がしたんだ。



今、思い返せば何の根拠もなかったんだけど……



「宗。あたしは宗を大切に思っていた。でも、豊を忘れられなかった。あたしにとっては豊のほうが大切だった。それだけのことなんだ。あたしが全部悪いと思ってる」



あたしは膝を付き、宗と同じ高さになって話を始めた。



話をするのは下手くそだけど……



自分の気持ちを言葉にするのは苦手だけど……



宗の目を見て想いが伝わるように一生懸命話しかけた。



きっと、人はいい言葉を並べ立てて喋るよりも、どれだけの想いをこめて喋るかって事のほうが大事なんだ。



豊を見ているとそう思う。



「でも、宗のしたことは許される事じゃない。あたしが宗をここまで追い詰めたんだから、偉そうな事は言えないんだけど……あたしは出会った頃の宗が好きだよ。あの頃の宗が好きだった。だから、変わらないで欲しい。優しくて、穏やかで、強い宗に戻って欲しい」



「……っひ……っ」



「そして、宗には幸せになって欲しいんだ」



あたしは想いを伝えた。



でも、宗は涙を流すだけで、何も答えてはくれなかった。



きっとこれが宗を傷つけた罰なんだと思う。