何事もなかったような穏やかな日々を過ごす中、あたしはいつものように屋上から空を見上げていた。



寒さが身に染みる時期になって来たということは、あと少しで豊達も卒業してしまう。



“卒業”なんていっても、この学校から豊達の姿がなくなってしまうなんて、あたしには実感がまるでない。



「いつも風邪ひくって言ってるだろ?」



乱暴に投げつけられた毛布を手に取り、あたしは体を毛布の中へと包みこんだ。



あの日、チータは豊の言葉に泣き崩れた。



ナイフを手放し、豊に縋るように声をあげて泣いた。



そんなチータの肩を強く抱きしめる豊の姿をあたしはカッコいいと思ったんだ。



今、ここであたしに小言を言っている奴と同一人物とは思えない。



何度も何度も嗚咽をあげながら謝るチータに豊は「その話は後だ」と立ち上がり、初めて顔色を変えたジュンの前に立ち塞がった。



「お前の切り札もなくなったな。どうする?」



「俺が負けるはずなんてない。この俺が負けるはずなんて……」



ジュンは気が狂ったように叫びながら、その場から立ち去ろうとする。



でも、豊やヘブンの面子がただで逃がすはずはなく、ジュンはボコボコにされた。