少し前までの静香なら耳まで赤くなっていたはずなのに……



今は頬すら色づかない。



何かを塗ったように真っ白な肌。



何を話そうかとあたしは言葉を選んでいると病室のドアがノックされた。



「はーい」



静香はドアに向かって声を出す。



きっと静香の中では大きな声を出しているつもりなんだろう。



でも、あたしからしたらその声は小さくか細く、今にも消えてしまいそうな声だった。



「静香ちゃん。検査よ」



車椅子を持ったナースが部屋の中へと入ってくる。



「カナ。悪りぃ」



「別に。また来るわ」



「あぁ。秀の女に宜しくな」



「わかった」



あたしは静香よりも先に病室を出た。



自分一人では車椅子に乗る事すらできない静香の姿を見ているのが申し訳なくて。



静香は強がりな奴だから、きっとこんな姿は誰にも見せたくないと思う。



だから、あたしは早足でその場を後にした。