あたしが教室の扉を開けた瞬間、あたしを横目で見ながらクラスメイトが騒ぎだす。



小さな声で話してはいるが、“豊先輩”とかって言葉が所々耳に入ってくる。



あたしは少しだけイラつきながら席に座った。



チータと明美の話ばかりの屋上にはいたくなくて、教室へ来てみたけど、居ずらさはどちらも変わらなかったみたいだ。



ハァ~とため息を吐いてから、あたしは机に顔を伏せた。



昨日、博巳さんのお店で豊が祐樹に何を話したのかわからないけど、祐樹はあの後戻ってきても何も言わなかった。



あたしのほうをじっと見つめてから何も言わずに帰っていった。



あたしは祐樹が何を聞いて、どう思ったのか、気になって祐樹の肩を掴もうとしたんだけど、伸ばした手を豊に遮られてしまった。



「お前が心配してることは何もない。祐樹さんもわかってくれた」



そう言われても……



納得は出来なかったけれど、もう祐樹の姿は小さくなっていて、あたしはその姿が見えなくなるまで、その場に立ち尽くしていた。