お重箱の蓋を閉め、あたしは唾を飲み込んだ。



話し出すために何かきっかけが欲しくて、目の前にあったお重箱の蓋を閉めてみた。



大したきっかけにはならなかったけど……



「あたしは宗に救われた。宗や宗の友達に……豊のことを忘れられなくて苦しんでいたあたしを笑わせてくれた。いつも優しく、あたしのすべてを包み込んでくれた」



出会った頃の宗の顔が頭に過ぎる。



あたしは宗との出会いから付き合うまでの経過をこと細かく豊に話した。



豊は相槌を打つこともなく、ただ黙ったあたしの話を聞いている。



「あたしは好きだった。宗の優しさが大好きだった。大切にしたいと心から思っていた。でも、豊のことが消えなかったんだ。宗といてもいつも豊の事を考えてしまう。豊と宗を比べてしまう。そんなあたしの気持ちが宗を変えていった」



宗が変わっていった話をし始めると豊の顔は段々と険しくなっていく。



それでもあたしはすべてを豊に話した。



宗が消えてしまったことも……