「お前がクラスの奴と付き合い始めたって聞いて、俺はすべてがどうでもよくなった」



ジュッと空き缶に煙草を捨てた豊は再び口を開く。



「俺のところにしつこく通い続けるふみを抱いた。お前が離れていくなら、もう女なんてどれでも同じだった。だから、好きでもないのに何度も何度もふみを抱いた」



豊の真実を聞いてあたしは胸の辺りが押しつぶされてしまいそうだった。



「でも、お前とあの日偶然会って、ボロボロな姿を見て、俺はいても立ってもいられなくなった。お前の体にこの手で触れて、ようやく気付いた。俺はお前がいいって。お前じゃなきゃダメだって」



掠れる豊かの声が切なくあたしの心に響いて来る。



それは宗のことを思い出したから。



豊が言っているのは宗から逃げたあの日。



あたしが本当に宗を裏切ったあの日だったから……



「あいつとお前の間に何があったのか聞かせてくれないか?すべてを聞きたいんだ」



喉の奥がキューっと熱くなり、涙が零れてきそうになるのを、あたしは必死に堪えた。



泣いちゃいけない。



あたしは豊に宗の事を話さなきゃ。



あたしの本当の気持ちを話さなきゃ。



豊のために……



あたしのために……



そして、宗のために……