翔や秀、チータが集まっている場所に行くと佐枝子さんはペタンと勢いよく座り込み畳を見つめている。



「佐枝子さん?」



いつもと違う佐枝子さんの態度が気になり、あたしは顔を覗き込んだ。



「悪りぃ。なんでもねぇよ。ちょっと眠くてな」



そう言いながら目元を擦った佐枝子さんの目は真っ赤だった。



泣いていた?



「ホント馬鹿だよな」



翔達はあたしたちが来たことにはまったく気付かずに馬鹿騒ぎをしている。



「有田の奴……あんな姿になりやがって。馬鹿だよ」



そう話し出す佐枝子さんの瞳には再び涙が……



「佐枝子さん」



あたしは胸が締め付けられるように痛くなり、佐枝子さんの手を握った。



「なんでだろうな?カナの前だと素直になれるわ」



アハハと笑う佐枝子さんの姿が……



泣いている。



「私もアイツには世話になったんだ。何にも恩返しできなかったけど……あんな体になりやがって」



佐枝子さんは悔しそうにあたしのほうを見た。



「有田はまだまだ死ぬ気はないって」



「そりゃ、そうだ。死なれたら困る」



ニカッと笑う佐枝子さんの手をあたしはさっきよりも力を込めて握り締める。



“死にぞこない”



佐枝子さんの言った言葉にはきっと色んな意味が含まれていた。



素直になれない佐枝子さんの想いが詰まっていたんだ。



それを有田はわかっていた。



佐枝子さん。



軽蔑したなんて思ってごめん。