「カナ。本当に一人でいいのか?」



「しつこいけど。いいってば」



「じゃあ、行ってくる」



「はいはい。行ってらっしゃい」



あたしは見てもいないテレビの前で祐樹に向かってヒラヒラと手を振った。



祐樹はこれから大学の人達と年越し旅行。



このアパートで一人で年越しさせるのが嫌だから、お前も来いって言われたけど、そんなの絶対に嫌だ。



知らない人たちに気を使って過ごすくらいなら、一人でこうしていたほうがいい。



それなのに祐樹は最後の最後までしつこく聞いてくる。



しつこい男は嫌われるぞって言ってやりたかったけど、怒られそうだからやめておいた。



あたしは顔の傷が治るまで豊の家でお世話になっていた。



でも、豊には殆ど会っていない。



あたしがいるせいで、豊は実家に戻っていたし、学校にもあまりきていなかった。



あの日から……



あの女に会ってしまったあの日から豊はあたしを避けている気がする。



きっと、あたしと会わないようにしてとか言われたんだろう。



だから、散々お世話になったのにお礼も言わずにこのアパートへと帰ってきた。



帰ってくるとすぐに冬休み。



あたしは何をするわけでもなく、ただ毎日ダラダラと過ごしていた。



豊のことばかりを考えながら……