「翔。どういうことだ?」



豊が翔を睨みつけている。



「学校来たら、ふみちゃん見かけて声かけたら、屋上行くって言い出して……あそこはダメだって言ったんだけどきかなくて今に至る」



「ふみ。来い」



あたしの横を通り過ぎた豊はふみに向かって話しかける。



あたしのほうは一度も見ずに……



「痛い!!離してよ!!どうして屋上はいれてくれないの?」



女がギャアギャアと騒いでいるけど、その声は段々と小さくなる。



きっと豊が女の体を掴み、連れて行ったのだろう。



「カナちん行かないの?」



あたしの前に立ち、屋上のドアに手をかける翔。



「あぁ。行く」



「じゃあ行きましょう」



翔が鈍い奴でよかった。



あたしが泣いていたことにもまったく気付いていない。



「さすがにそろそろ寒いよね~」



いつものソファーに向かって歩きながら、翔は空に向かって手を伸ばす。