「そっかって何?宗はそれっきり家にも帰ってないんだよ!!宗の家は厳しいから、学校を辞めたら絶対に家にいれない。だから、宗はどこかへ行っちゃったんだよ。全部、カナちゃんのせいなのに……」



大声でそう怒鳴った萌は、話し終わると大声で泣き出した。



クラスの中がザワザワと騒がしくなる。



「萌。ごめん」



きっと本当の事を話したって今の萌は信じてくれないだろう。



完全にあたしの言葉を信じれないのに、もしかしたら宗が……って悩むことになる。



萌をこれ以上泣かせたくない。



あたしを憎むことで、少しでも悲しみが和らぐのならそうして欲しかった。



あたしは泣きじゃくる萌の頭を撫で、教室から出た。



「本当のこと話さなくていいのかよ?」



壁にもたれ掛かりながら腕を組み、こちらを見ている豊。



「これでいい」



「なら行くぞ」



歩き出した豊の背中を見つめながら、歩き出そうとしたその時……



「カナ?」



名前を呼ばれた。



顔を上げるとそこには部活を終えた、千の姿が……



あたしは千にも恨まれているんだと思ったら、何も言うことができなくて、そのまま千の横を通り過ぎた。



「本当のことってなんだよ?なぁ、カナ?何かあるなら話してくれ」



あたしの背中に千の言葉が届く。



聞かれていた。



豊との会話を千に聞かれていたんだ。



でも、知らないほうがいい。



あたしの話を聞けば、千も苦しむ。



そう思いあたしは振り返らずに、歩き続けた。