「二股かけてたような女に教えるはずないけどね」



萌は目に涙をいっぱい溜めて言葉を続けた。



「どうして、何もかも奪うの?野球をやめて欲しいとか……千ちゃんや萌と仲良くするなとか……宗は全部カナちゃんの言うとおりにしたでしょう?それなのに二股かけた上に振るなんて酷すぎる」



「それって……宗が言ってたのか?」



事実とは違う萌の話にあたしは愕然とした。



「萌は直接聞いたわけじゃない。宗が千ちゃんに相談してたから」



「学校をやめるっていうのも千に言いにいったのか?」



萌は机の上に水溜りが出来そうなくらい涙を流している。



「昨日、千ちゃんのウチにいたら、宗が来たの。それでカナちゃんに振られて学校にいるのが辛いから、やめるって……萌達は引き止めたけどきかなかった」



「そっか……」



昨日、豊の家に来たのは、その事を伝えたかったのかもしれない。



あたしが最後まで話を聞いていたら、宗はこんな決断はしなかった?



血走っていた宗の瞳を思い出すとあたしまで泣きそうだ。