自分で話さなければいけないことだとはわかっていても、宗の前に行くと震えてしまう。



宗と二人きりで別れ話を切り出すって考えただけで恐ろしい。



その先どうなるかなんてわかっているから。



「そうと決まれば、さっさと呼んで来い」



「はっ?今?今日言うの?」



「早いほうがいいだろ?」



「そ、そうだけど……」



コイツ絶対楽しんでるし。



こんなこと引き伸ばしたって何の意味もないことはわかってる。



でも、あたしにだって心の準備ってものが……



そんなあたしの気持ちなんて微塵もわかっていない豊は「悪いけどここ貸してくれ」なんてでかい声でみんなに言っている。



言うしかないんだな……



あたしは重い腰を上げた。



「カナちん」



すると屋上から出て行く人たちに混ざって翔が近づいてきた。



「大丈夫?」



「大丈夫」



「何があったかわかんないけど、俺はカナちんのこと大好きだからね」



そう言いながらあたしの手を両手で包み込む翔。



思わず涙が出そうになる。




「ありがと。いつか話すから。それまで待ってて」



あたしの言葉に今日初めて笑顔を見せてくれる。



「わかった。よくわかんないけど頑張れ」