「一人で話すのか？」



煙草に火をつけた豊は再び口を開く。



「そうするべきだと思ってる」



「また殴られるぞ」



「かもしれない。でも、自分でけじめつけなきゃ」



「お前らしいな」



珍しく豊の口が笑っているかのように上へと上がった。



「あたしらしいとかわかんない。でも、そうするべきなんだ」



「お前は一度言いだすと聞かないから、何を言っても無駄だな」



そう言いながら、あたしの頭にポンポンと手を乗せる豊。



「俺も一度言いだしたら聞かないの知ってるよな？」



「知ってる」



何か企んでそうなその言い方に、あたしは豊の次の言葉を身構えるように待った。



「ここに呼んで来い。ここで話をしろ」



「はっ？」



コイツは何を言ってるんだ？



目をパチクリさせて何度も豊の顔を見たけれど、本気で言っているらしい。



「屋上で二人きりにしてやる。その代り、何かあったら俺が間に入るからな」



「本気かよ？」



本気なのはわかっているけど、一応確認をしておこう。



「あぁ」



大きなため息をついたあたしを豊はご機嫌で眺めている。



あたしの今の状況を楽しんでいるかのように見えるその姿に腹が立ったけど、あたしも心のどこかでホッとしていた。