あたしのせいで、気まずい空気が流れる。



「翔、はずしてくれ。コイツに話がある」



そんな沈黙を破ったのは豊だった。



翔は何も言わずに立ち上がり、別のソファーへと移動した。



「翔には言えない」



「あぁ、わかってる」



あたしは顔を上げ、豊の瞳をしっかりと見つめる。



「これからどうすんだ?」



「考えてない。ただ、もう宗とはいれない。限界だ」



「別れんのか?」



「あたしのせいで宗を変えてしまったのに、自分勝手だけど、別れたいと思ってる」



「そうか」



低い声で静かに話す豊の声が心地いい。



ぶっきら棒な喋り方しかしないって、不満に思ったことがあったのに、今ではこの豊独特の話し方がしっくりと来る。



人は離れて初めて気付くことが多い。



失って初めて大切だと思えてしまう生き物だ。



そんな自分勝手な生き物だけど、大切だと気付けた自分が好きだったりする。



あたしは、豊の多くに気付けた事を嬉しく思うよ。



側にいた時はわからなかった豊の一面を感じることができて、あたしは今本当に嬉しいんだ。