「えっ?カナちん?」



ソファーに座っていた翔があたし達の存在に気が付くと立ち上がりゆっくりと近づいてくる。



「カナちん、何があった?」



そう言いながらあたしの体を抱き締める翔は小刻みに震えてる。



「てめぇ。離れろ」



握られている手に力が入り、豊の声が頭上から聞こえる。



翔はゆっくりとあたしから体を離した。



「もう、豊の彼女でもなんでもねぇだろう?それより誰だよ?」



翔は豊に掴み掛かりそうな勢いで近づいた。



豊は何も答えない。



「誰か言えって!!豊!!」



豊は翔の言葉を無視したまま、あたしをソファーに座らせた。



「もしかして……てめぇかよ!!だから言えないのか?!」



豊の胸ぐらを掴み上げる翔の腕にあたしはそっと触れた。



「豊なわけないじゃん。豊には助けてもらっただけ。あたしドジだから階段から落ちたんだ」


アハハって笑ったけど、上手く笑えているだろうか。



別に宗を庇いたかったわけじゃない。



ただ……



宗にやられたと言ったら、翔は責任を感じる。



従兄弟っていうだけで、責任を感じてしまうような奴だから……



翔には知られなくなかった。



「カナちん」と悲しそうな顔をする翔だけど、そんな顔されてもあたしは話すつもりはない。



ごめんな。



翔……