本当に偶然豊が助けてくれなければ、あたしはどうなっていたか……



宗の顔を思い出すだけで、また体が震えてきそうだ。



「まだここにいろ」



「で、でも……」



「またあいつに殴られたいのか?」



豊の言葉にあたしはブンブンと首を振る。



「なら、送ってやるからもう少し待て」



「で、でも……」



「なんだよ?」



「あたしここにいて迷惑じゃないの?」



「あぁ」



ぶっきら棒な返事とは裏腹に豊の手が優しくあたしの体を引き寄せる。



「染みるかもしれないぞ」



今、豊にはあたしはどう映っているんだろう?



彼氏に殴られる可哀想な女?



それとも手のかかる昔の女?



「いつからだ?」



「へっ?」



久しぶりに聞く主語のない質問にあたしは頭を捻る。



「殴られ始めたのはいつからだ?」



「えっと……最近」



「そうか」



何でそんなこと聞くんだろう?と思いながらも目の前にいる豊の顔を眺めていた。



これは夢なんじゃないかって何度も思っていた。