「俺の女に何か用か?」



その言葉にあたしの瞳からは大粒の涙が流れ落ちる。



「やっぱり……そういうことだったのか!!カナ、いつから俺を騙してたんだよ!!その男と付き合いながら俺とも付き合ってたのか?!答えろよ!!」



怒鳴る宗に立っていることさえできなくなるあたしを豊は抱え上げ歩き出す。



「待てよ!!逃げんのか?!」



豊は足を止め、宗のほうへと振り返る。



「いつでも相手ならしてやるよ。今はコイツの手当てが先だ」



そう言うと再び歩き出す豊。



もう、宗の声は聞こえてこない。



豊の温もりに包まれながら、あたしの体の震えは段々と収まっていった。



「ここ座ってろ」



そう言って豊はソファーにあたしをおろし、畳の部屋へと消えていった。



懐かしい豊の匂い。



あたし、ここにいてもいいのかな?



彼女が帰ってきたりしたら……そう思うと急にいけない事をしている気分に苛まれ、あたしは立ち上がり玄関へと向かった。



「どこ行く?」



「帰ろうかと思って……今日はありがとう。助かった」



あたしは豊のほうを振り返らずにお礼を言った。