「でも、俺が声をかけた少し前くらいからカナが変わってしまった」



豊にサヨウナラをした後の事を言っているのだろう。



「寂しそうで、苦しそうで、消えちゃうんじゃないかって思った」



「だから、声かけたのか?」



「うーん。それもあるけど、前からカナと話してみたかったんだ」



「そう」



「豊先輩のことまだ好きなんだろ?」



「…………」



豊のことは封印した気持ち。



だから好きじゃないって言いたかったのに言葉が出てこない。



「ごめん。答えなくていいよ。俺じゃダメかな?」



「はっ?」



「そんな顔しないでよ」



どんな顔をしてるかはわからないけど、宗の言葉に驚いたのは確か。



「俺、カナの事をずっとみているうちに好きになってたんだ」



「やっ……でも、あたし……」



「カナの気持ちが誰にあってもいい」



そう言ってあたしの手を握り締めた宗の手は細くて綺麗な手だった。



ゴツゴツした豊の手とは違って……



「俺はカナと居たいんだ。ダメかな?」



そんな風に上目遣いでダメかな?なんて言われたらダメだなんて言えない。



「あたし、宗のこと好きじゃないよ」



「今はね。付き合っていきながら好きになってくれればいい」



「うん……」



「いいの?!やったぁ!!」



飛び上がる宗を見ているとあたしまで嬉しくなってくる。



「じゃあ、まずは言葉遣いから治そうね」



「はっ?」



「はっ?じゃなくて、えっ?」



「なんだよそれ」



「俺の前ではそのままのカナでいいよ。無理して言葉遣い悪くしなくていい。元のカナの姿に戻って」