車の中では一言も会話がないまま、学校へ着いた。



校門の前では何故だか翔が立っている。



キョロキョロと辺りを見回し、どこからどう見ても不審者だ。



「何だアイツ」



豊はボソッとそう呟くと車を降りていった。



「おう!!豊!!」



「何やってんだよ」



あたしは足元に視線をやりながら、豊の後ろを歩く。



「病院ダメだったろ?」



「あぁ」



「行くなってお前から言った方がいいと思って」



「わかってる」



“行くな”って病院にってこと?



「何言ってんだよ!!」



「あっ、カナちん。おはよう」



いつものように笑顔を向ける翔に腹が立つ。



「何で病院行くななんて言うんだよ!!」



「それはね……」



翔があたしに近づきながら、説明をしようとしたその時。



「豊?」



透き通った綺麗な声が、豊の名を呼んだ。



「豊?」



聞き惚れてしまうような、高くて美しい声。